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「実録 ナミテントウの世界」を刊行 特任研究員、木村滋さん

 特任研究員、木村滋さんが「CROSS T&T」誌の発表原稿をまとめ直し、「実録 ナミテントウの世界」を著した。総合科学研究機構を発行所にしての刊行(4月30日付)で、前著「ナミテントウ虫の観察日記」(宮帯出版社、2018年刊)に盛れなかった採集個体数の集計表など図表各種を添付し、論文体裁の観察記録になっている。

 いわゆるテントウムシは、ナナホシテントウとナミテントウの2種がよく知られる。ナナホシは翅の紋様が赤地に7つの黒い紋のワンパターンだが、ナミテントウは斑紋が変化に富んでいて、約100年前から国内外の遺伝学者などによってさかんに研究されてきた。

 農水省蚕糸・昆虫農業技術研究所長などを経て、3月までCROSS編集委員を務めた木村さんは、ナミテントウが自宅へ集団して飛来する姿を目撃した2000年ごろから観察をはじめ、その翅の紋様の多彩さに興味をもった。

 木村さんによれば斑紋型は大きく、二紋型、四紋型、まだら型、紅型の4つに分類できる。群れとして共存しており、紅型(黄地に黒紋など)が劣性遺伝子という。この紋様はどのように形成・維持されるのか。観察はやがて採集と飼育、交配実験に及んだ。

 肉食のナミテントウが好むアブラムシは、毎年春先にウメやカエデの樹木で発生するので、つくば市内で4月初旬から定期的に樹木を見回った。ウメの樹のアブラムシの発生状況とナミの繁殖状況を1カ月かけて観察した結果、アブラムシ-ナミテントウの食物連鎖関係が明らかになり、ナミテントウの発生状況や成虫斑紋型分布率の日別変化などを調べることができた。

 ナミテントウは共食いをするし、メスは異なるオスと多回交尾するなどの生態もわかってきた。共食いは繁殖集団の個体数を激減させ、多様性を喪失させる恐れがあるが、特定の生息地における成虫の斑紋型分布は数十年にわたって変わらない。共食いに対する補償作用としてナミテントウの驚異的な産卵能力と多回交尾行動があるのではないかと分析している。

 また、特定の斑紋型間の交配実験によって子どもの成虫斑紋型の分離比率を求めて、両親と子どもの遺伝子型を明らかにすることができた。その遺伝様式は、ヒトの血液型A、B、 AB、O型に似ていて、複対立遺伝子であった。この交配実験から、成虫斑紋型の紋様の種類とその遺伝子型との関係が分かった。

 複対立遺伝子は3 種類以上の対立遺伝子により形質が決まる遺伝現象で、「優性」「劣性」のメンデルの法則が典型的に当てはまる。この法則によるアプローチで、ナミの成虫斑紋型の形成機構を遺伝子レベルで明らかにしていった。

 成虫斑紋型の4つの表現型と10個の遺伝子型の関係が分かると、標準化、イラスト化することができた。そして、成虫発生状況から繁殖時における斑紋型遺伝子の流れを想定することができるという。著作では、これらの図式化も試みている。

 ナミテントウの斑紋型がどのように形成されるのか遺伝子レベルで解明していくと、すべての個体が均しく交尾するのではなく、二紋型オスが中心に行われることが分かった。越冬集団とその繁殖集団の斑紋型分布比率を比較すると差がなかった。斑紋型は繰り返して形成されることが分かったという。(文責/CROSS T&T編集長/相澤冬樹)

 

「ナミテントウ虫の観察日記」の記事はこちら

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